産経新聞 中川晶の生き方セラピー 第11回 平成16年6月12日掲載「生活の様々なことが気になる」

■相談

「内職をしています。ひとつできていくら、というようなものですが、出来上がりが気になって仕方ありません。一つできるたびに確認して、また確認。そのため仕事が前に進みません。どうしても気になってしまうのです。実は日常生活の中でも何でも気になります。たとえば家を留守にするときガスを切ったか、鍵をかけたか、など。車に乗っているときもぶつけていないか、ドアを開ける時もとなりの車にぶつけていないか、気になります。駐車場にとめるときは、できるだけ他の車の止まっていない、入り口から遠いところにとめるようにしています。町内の回覧板を郵便受けに入れるときでも、きちんと入れたかどうか気になるのです。書き出すときりがないぐらいです。本当にどうしたらいいかわからず困っています」 京都府 主婦 34歳

 

■回答

細かいことが気になって仕方ないのですね。あなたはきっと、とても優しい人なんでしょうね。だって、心配事は全て他人に迷惑をかけないようにという配慮から出てますもの。内職の仕上がりはお客の満足度に関係するでしょうし、ガスを切ったかどうかの心配は出火してご近所に迷惑をかけては一大事と思われるからでしょ。車の駐車の件や回覧板の件でも同様ですよね。

 こんないい人のためには是非ひとハダ脱いであげたいものです。さて、これはぼくの患者さんの話ではないのですが、まあ聞いてください。ある患者さんが眠れなくなったそうです。困った彼は精神科医のところで様々な薬を処方して貰いましたが駄目でした。それからは漢方を試したり、運動したり、様々な流派の心理療法を受けたりとそれはもう大変な努力をされたのですが眠れません。彼の訴えはこうでした。普通は目をつぶればものが目えないので安心して眠れる。しかし自分の場合、目をつぶると瞼の裏側が見えるので眠れない。寝ても起きてもものを見続けていて苦しくて眠れない。そんなバカなと一笑にふさないでください。本人はたいそう苦しいのです。そして彼は治療法を求めて数年苦しんだそうです。そして、ついに「万策尽きてしまった。もはやどうしようもない」と呻きました。ところがその夜、彼は数年ぶりにゴーゴー鼾をかいて眠りに眠ったそうです。彼の場合、治らないと諦めることが逆に効いたようです。何とかしようと焦れば焦るほど土壺にはまります。ここは一番、治そうとするのではなく、几帳面さの利点を考えてみるのも一法です。ただし、最近はこの種の病態に効果のある薬もボチボチ出てきているので試すのも一法かも・・・