産経新聞 中川晶の生き方セラピー 第15回 平成16年7月10日掲載「過去の記憶がなくなる」

■過去相談

 過去の記憶がなくなります。たとえは中学や高校の同級生と話していて『昔こんなことあったなあ』などと盛り上がる時に、ぼくだけ、どうしてもその記憶がありません。特に、それが楽しいエピソードだと忘れてしまっているのです。逆に、いやな記憶は細かいことまではっきりと残っています。ちなみに人の名前などもなかなか覚えられません。どうやったら、楽しい過去の記憶をよみがえらせることができるのでしょうか。楽しい記憶を忘れないにはどうしたらいいのでしょうか」

                                            会社員(43) 兵庫県在住

■回答

 おや、これは珍しいケースです。普通はね、楽しい記憶は鮮明に残り、嫌な記憶は忘却の彼方というのが多いんです。だから老人になると「昔は良かった」「今の若いもんは・・」という言葉が出てきます。

でも昔はホントに良かったのでしょうか?。勿論、手放しで喜べるような時代ではありませんけどね・・ま、いつの時代も良いこと、悪いこと相半ばというのが真実でしょう。

また「いまの若いもんは・・」と老人はいいますが、当人たちも若いときはその時代の老人に「今のわかいもんは・・」と言われてたんです。もしこれが真実だとすれば、昔にもどれば戻るほど人間は偉くなるってことになります。そうするとアウストラロピテクスなんてどんなに偉かったか・・っておかしいでしょ。

 

  つまり、どうなっているかというと、老人になって歳を取ると苦痛な思い出に耐えられなくなり、脳が嫌な記憶をデリート(消去)にかかるのかもしれません。ところがあなたは嫌な記憶だけ残っているとおっしゃる。とすれば、あなたの脳はまだ耐性が失われてないともいえます。

 とはいえ、嫌なことばかり覚えているというのは苦痛ですよね。ぼくが思うに、どうも普通でないタイプの記憶障害をお持ちなのは、あなたが「どうせいい思い出なんて・・無理に決まってるもんね」と悲観的になっておられることが原因・・・さあ、思い出してみましょ。お母さんが作ってくれたお弁当を初めて開いたときの嬉しさ、お父さんと暑い夏の日にキャッチボールをしたこと・・いかがですか?何か出てきましたか?もし想起し難かったら、楽しいことがあった可能性のある場所を訪れてみてください。楽しい思い出捜しの旅なんて考えただけでワクワクしてしまうのはぼくだけですかねえ?

 ただ、人の名前が覚えにくいというのは、ひどければ前向健忘に入るかもしれません。頭を強く打ったとかアルコールを大量にお飲みになるなら脳の問題かもしれません。って、おどかすつもりじゃないんですけど、念のため神経内科受診をお勧めです。白状するとぼくも最近人の名前が覚えられません・・