産経新聞 中川晶の生き方セラピー 第6回 平成16年5月8日掲載「高いところに住むのが怖い」

■相談

主人が急逝してから一人で暮らしていましたが、新築のケア付きマンションに移ることにしました。環境も良く見晴らしも良く良いことづくめですが、入居する部屋は十階。実は小さい頃から高所恐怖症なのです。みんなは「じきに慣れる」とか「薬を飲めば」とかいろんなことをいうのですが・・・大阪府女性

■回答

 おっと、恐怖症ですか。これなら答えられそうです。恐怖症というのはいろんな種類がありましてね。つまりは恐怖の対象が千差万別なんです。映画で「アラクノフォビア」というのがありましたが、あれは蜘蛛恐怖症という意味です。さて、恐怖症がなぜ起こるかはよく分かってません。精神分析家は幼児期のトラウマが原因だといいますし、行動療法家は、いやいや恐怖症は貧乏揺すりなどと同じく単なる癖みたいなものだと言います。ま、どっちが正しいのか分かりませんが、小さい頃のことをいろいろほじくっても埒があかないことが多いようです。しかし恐怖症の治療ということになると、どうも行動療法の勝ちのようです。要するに変な癖のひとつと考えて治療することが効果的のようなのです。治療法ですが系統的脱感作という方法を使います。難しい用語ですが、何のことはない「徐々に慣れる」ということです。お尋ねの高所恐怖症の場合、まずは二階から下を見下ろすことをイメージしてください。それでドキドキしてきたら深呼吸してみましょう。深呼吸が効果的でない場合は自律訓練法というリラックス法を組み合わせてみるのも一法です。二階がOKになれば今度は三階をイメージしてみてください。これを続けていって十階までOKになれば、実際に二階に行ってトレーニングしてください。根気よく続けていけば効果的です。一人でやるのが難しければ、心療内科医か精神科医に手伝って貰ってももいいかもしれません。

 それにしても周囲の人って、好きなことを言ってくれますよね。これには訳があります。物理学や化学であれば素人と玄人の違いははっきりしているのですが、心理学となると違いがはっきりしません。もっと言えば誰でも大きくなると、いっぱしの心理学者になってしまうのです。そこらへんのオッチャンもオバチャンも一家言もつようになります。これが案外、始末に終えません。だって皆、自分の言ったことが真実だと信じてますから。そうですねえ、ぼくも、自分の言ったことしか実は信じてなかったりして・・・